Home > 社説 > 地方紙 > 北陸地方 > 北國新聞(石川県) > 【北國新聞】 県と金沢市の課題 首長の緊張感が問われる
E165-HOKKOKU

【北國新聞】 県と金沢市の課題 首長の緊張感が問われる

そう思わないそう思う (まだ投票していません)
Loading...

 ことしは3月に知事選、秋には県都・金沢市の市長選がある。人口減少が進む時代に首長が果たすべき役割は大きい。7選出馬を表明した谷本正憲知事はもちろん、3選出馬が有力視される山野之義金沢市長も重責に緊張感を持って臨んだかどうかが問われることになる。
 緊張感にこだわるのは、県と金沢市にとって今は大事な局面であると考えるからだ。北陸新幹線の開業で県内に活気が生まれ、街の空気が一変した事実を見ても、ふるさとは変わり目にあると認識する必要があるのではないか。
 この節目を好機として生かし、発展につなげることができるのかどうか。知事と金沢市長には変わり目の意味をつかむ大局観と、変化に的確に対応する見識が求められる。少なくとも時代の転機に自治体を運営するリーダーとして、緊張感は持ち続けてほしい。
 昨年末に読者が選んだ県内の平成10大ニュースで首位になったのは2015年3月の北陸新幹線開業である。谷本知事と山野市長にとっても新幹線開業は今任期中の画期的な出来事となっただろう。
 大勢の人を乗せ、雪が降っても時間通りに駆け抜ける高速輸送機関の威力は絶大である。想定以上の開業効果が6期目の谷本県政、2期目の山野市政を力強く支えたのは間違いない。全国で首長が地方創生の材料探しに躍起になるときに、黙っていても強力な追い風が吹いたのは幸運とも言えた。
 しかし、危機は絶好調のときに忍び寄る。にぎわいの裏で文化立県、文化都市の屋台骨に、きしみは出ていないだろうか。活気づくときこそ首長には、ふるさとのひずみを見抜く緊張感がほしい。
 金沢では茶屋街を歩く観光客が増えたが、肝心の茶屋の方では後継者不在で廃業した店もあった。油断すれば街の風情に合わない開発が進むかもしれない。ことしは民泊の規制緩和を利用する動きも出るだろうが、街なかでは住環境の悪化を心配する声も上がる。住民の安全と安心が揺らげば、観光の振興どころではない。
 目先の利益ばかりを追う事業によって文化が消費されるままにしておけば、ふるさとの趣も色あせる。県と金沢市には、ふるさとの財産を守る気概を持ってほしい。
 もちろん北陸新幹線がもたらす経済効果を持続させることは大事である。2023年春の金沢-敦賀開業で活力を広げるための準備は着実に進めなければならない。
 県にとっては敦賀開業時にJRから引き継ぐ並行在来線の経営を安定させる課題も重い。前途は多難だろうが、かつて「お荷物」と言われた金沢港も、今ではクルーズ船の発着港として目覚ましい活躍をみせている。在来線の経営でも知恵を絞り、神経を研ぎ澄ませて活路を見つけてもらいたい。
 並行在来線の問題に限らず、首長には地域に明るい展望を描き、それを実現する力が求められる。事を進める際に住民をその気にさせる器量と言い換えてもいい。
 金沢市では金沢マラソンが市民だけではなく、全国の愛好者からも注目される事業に育ってきたが、その他の施策の進み具合はどうだろうか。来月から始める家庭ごみの有料化に対しては、今も反対の意見が収まらない。住民に負担を求める施策には異論が付き物としても、もっと緊張感を持って準備を進める必要はなかったのかと気に掛かる。
 年が明けて、県と金沢市はこれから2018年度予算案の編成に拍車を掛ける。県民、市民の暮らしを豊かにし、ふるさとを元気にするアイデアがいくつも盛り込まれることを期待したい。そして、どのような施策を展開するにしても頭に入れておいてほしいのは県民、市民の安全を守るという観点である。北朝鮮を巡る情勢が緊迫しているからだ。
 昨年は日本海に北朝鮮の木造船が大挙して押し寄せた。秋田では乗組員が人知れず上陸し、北海道でも無人島の漁業施設が荒らされた。いずれも深刻な事態である。
 木造船は石川の海岸にも流れ着いており、人ごとではない。北朝鮮から難民が来ることを想定しなければならない局面だろう。首長をはじめ職員の一人一人に至るまで緊張感を持って職務にあたってほしい。ふるさとの安全は、ことしの大きな課題である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。