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【岩手日報】 <平成の30年>格差社会 次代への連鎖断ちたい

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 「日比谷公園は久しぶりだなあ」。自転車で軽快にやって来たのは、派遣ユニオン書記長の関根秀一郎さん。人並み外れた馬力の持ち主だ。
 岩手大中退後、出身地の東京に戻り、非正規雇用問題に取り組んできた。2008〜09年の年末年始、この公園を舞台とした「年越し派遣村」の立役者として知られる。
 好景気に沸く昭和から平成に入ると、間もなくバブルが崩壊。地価と株価が下落し、長い不況に入る。政府は規制緩和を推進し、対象業務を原則自由化する労働者派遣法改正などで、非正規雇用がどんどん拡大していく。
 08年のリーマン・ショックに端を発する世界金融危機は日本経済を直撃。大手製造業が減産体制に入る中、横行したのが「派遣切り」だった。
 職を失い、会社の寮も追い出され、路頭に迷った人たちの命を救う。そして、「経済大国日本」に広がる格差の現実を可視化する。派遣村は大きな注目を集めた。
 「あの時も寒かった」と関根さん。当時、年越しそばの炊き出しや集会を開いた現場を案内してもらった。「たくさんボランティアもカンパも集まった。日本も捨てたもんじゃないなと思った」と振り返る。
 派遣村から10年。公園は静かで、当時の名残は何もない。だが今なお、格差と貧困が深刻な問題であることに変わりはない。その現場は、私たちのごく身近にある。
 リーマン・ショック以前から広がっていたのが、子どもの貧困。12年の調査では、6人に1人が貧困状態という過酷な状況が判明した。
 景気が上向いたことで15年時点では若干改善したが、先進国の中では依然高い。特に非正規雇用のシングルマザーを取り巻く状況は厳しい。
 非正規の雇用安定の道のりも険しい。労働契約法の改正で、有期労働契約が通算5年を超えた場合、無期契約に転換できる「無期転換ルール」が今年4月から適用される。だが、関根さんの元には「(ルール適用前に)雇い止めを告げられた」といった相談が相次いでいるという。
 「バンバン相談を受け、一つ一つ問題を解決し、格差の拡大を食い止める」。関根さんは力強く自転車をこぎ、公園を後にした。
 私たちも、身近なところで力になれることがある。全国で広がるフードバンク活動。家庭や企業で余った食料品の提供を受け、困窮世帯などに届ける仕組みだ。「子ども食堂」の開設も相次ぐ。日本はまだ捨てたもんじゃない。
 貧困で十分な教育を受けられず、社会に出ても職業選択の幅が狭まる…。こうした次代への連鎖を私たちの一歩で断ち切りたい。
 

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