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【茨城新聞】 朝鮮半島情勢 緊張緩和を行動で示せ

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北朝鮮の金(キム)正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長が年頭に行った施政方針演説「新年の辞」で、韓国で2月に開催される平昌冬季五輪への代表団派遣を含め南北関係改善への意欲を表明した。
核・ミサイル開発を続けながらの対話攻勢の狙いが、強まる一方の国際社会からの制裁圧力や、米国との軍事的衝突を回避するために韓国を取り込もうとする一時的な術策であってはならない。核実験や弾道ミサイルの試射を中断するなど、緊張緩和に向けた具体的行動が伴わなければ説得力はない。
演説直後に韓国は北朝鮮の対話姿勢を評価、高官級協議の早期再開を提案した。これに北朝鮮も呼応し、2年近く断絶していた板門店に設置されている南北の直通電話回線による連絡チャンネルを復活させた。
こうした北朝鮮の出方は、もともと昨年5月の政権発足当初から南北対話を呼び掛けていた韓国の文(ムン)在寅(ジェイン)大統領が待ちわびていたものだ。北朝鮮情勢についての当事者でありながら、外交的な駆け引きでこれまで存在感が希薄だった韓国が高揚感にとらわれるのも分からなくはない。
しかし、南北対話に関し、韓国は昨年7月に軍事会談と赤十字会談を北朝鮮に提案していた。半年近くこの提案を無視し続けてきた北朝鮮が、なぜ平昌五輪開幕を1カ月後に控えた時点で対話攻勢を仕掛けてきたのか。韓国は、その理由を冷静に考えるべきだろう。
日米韓の連携や米韓同盟にくさびを打つだけでなく、韓国を取り込むことによって、トランプ米政権が北朝鮮への軍事的行動に踏み切らないようけん制するという戦術的な狙いはないのか。
さらには、国際的な圧力包囲網に風穴をあけ、制裁一辺倒の北朝鮮政策に距離を置く中国やロシアに韓国を加えて対話陣営を構築し、トランプ政権に交渉を迫ろうとしているのではないのか。北朝鮮の戦術的なシナリオに韓国が踊らされるようなことがあってはならない。
平和の祭典と称される五輪に北朝鮮が参加することに異議を唱えるのは現実的ではない。しかし、「平和」や「民族同士」といった美辞麗句の裏に横たわる思惑を読み解かなければ、北朝鮮が主導しようとする南北対話から緊張緩和は生まれない。ひいては北朝鮮の非核化という国際社会の一致した目標の実現を、さらに遠ざけてしまうことにもなりかねない。
「新年の辞」は韓国に対話と関係改善を訴える一方で、核弾頭とその運搬手段である弾道ミサイルの量産化と実戦配備の方針を打ち出し、核開発路線から一歩も退かない立場も鮮明にした。金正恩氏は米国に対し、「核のボタンが私の事務室の机上に常に置かれている」と威嚇も強めた。
このままでは、韓国は核を保有した北朝鮮と共存しようとするつもりなのかと疑われてもやむを得ない。韓国は日米に、そして国際社会に対し、南北対話の意義と北朝鮮の非核化の関係についてどのような戦略を描いているのか早急に説明する必要がある。
そうしなければ、南北関係の改善は決して歓迎されることはないだろう。矢継ぎ早に突然のように始まった南北対話の流れは、平昌五輪が終わった後に真価を問われる。緊張の“一時休戦”で終わらせてはならない。

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