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【読売新聞】 羽生・井山氏 棋士初の国民栄誉賞を祝う

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 新年早々の明るいニュースだ。空前の快挙を達成した天才棋士のダブル受賞を祝福したい。
 政府が、将棋の羽生善治竜王(47)と、囲碁の井山裕太棋聖(28)に国民栄誉賞を贈ることを正式決定した。棋士の受賞は史上初めてである。
 羽生氏は昨年12月、「永世七冠」の資格を獲得した。7棋戦のタイトルの永世称号を得るという極めて高いハードルを乗り越えた。15歳でデビューした後、30年間近くトップ集団で走り続けてきたからこそ実現できた金字塔だ。
 約20歳年下の井山氏は、羽生氏の後を追うように、卓越した実績を残してきた。最年少の20歳で名人位に就いた。2016年4月には、史上初の七冠に輝いた。
 いったんは名人位を失って六冠に後退したものの、昨年10月、見事に返り咲き、2度目の七冠同時制覇という偉業を果たした。
 中国、韓国勢に押されがちだった国際棋戦でも、昨年は韓国のLG杯準決勝で、「世界最強」と称される中国の柯潔九段を下した。2月には決勝三番勝負に臨む。
 円熟味を増す羽生氏と、全盛期を迎えつつある井山氏。世代は違っても、2人が演じてきた数々の盤上の名勝負やドラマは、多くの人たちに深い感銘と勇気を与えた。将棋・囲碁界の発展にも多大な貢献をしてきた。
 国民栄誉賞は「国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったもの」を対象とする。棋界から文化功労者が選ばれた例はあるが、比類なき活躍で幅広いファンを魅了したことは国民栄誉賞にふさわしい。
 謙虚な姿勢と大衆的な人気の一方で、常識にとらわれず、いつも「最善の一手」をギリギリまで追求する。求道者的な一面を併せ持つのも、両氏の共通点だ。
 羽生氏は「将棋の根本的なことは分かっていない」と語った。井山氏も「自分はまだこれから。囲碁は奥深い」と強調する。
 様々な栄誉に浴しても、2人の探求心が衰えることはない。その情熱をエンジンとし、不断の研鑽(けんさん)を重ねて、新たな大記録に挑戦することを期待したい。
 将棋や囲碁の世界では近年、棋力で人間を凌(りょう)駕(が)する人工知能(AI)が登場している。
 加速度的に進化を続けるAIと人間はいかに共存していくべきか――。社会が直面する今日的問題に対し、両氏は盤上で、正面から向き合っている先駆者でもある。その歩みは、現代人に大きな示唆を与えてくれるだろう。

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