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【陸奥新報】 弘前城の新発見「市民の力でさらなる価値を」

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 世紀の大プロジェクトとして注目される弘前城本丸石垣修理事業は、石垣解体作業が昨年12月中旬に一時終了し、3月下旬の再開までしばしの中断となる。同年4月から始まった解体作業は、ナンバリングした2518個の石のうち、1233石が外された。進捗(しんちょく)率48・9%というから、ようやく半分の道のりだ。今さらながら息の長い取り組みが必要になると感じる。昨年分の石垣解体が大きな事故もなく無事に終了したことに安堵(あんど)している。工事再開後も滞りなく事業が進み、日本最北の現存天守が再び天守台の上に座る姿を一日も早く見たいものだ。
 昨年は石垣解体に伴い、さまざまな新事実が発見された。その中でも注目されたのが、元禄期のものと推定される排水遺構が明治以降に埋め立てられていたことだろう。石垣を解体して修理する理由となったのは、石垣が膨らんで崩落する危険があったためだが、この石垣のはらみの要因の一つが、排水遺構の埋め立てによるものと分かったのだから、今回の発見の意義は大きい。弘前城の石垣が今後100年、200年と、その美観を保っていくために、どのような対策を講じるべきか。排水路が埋め立てられたことによって石垣にどのような影響を与えたのかを専門家らの意見を聞きながら明らかにし、今後の対策に役立ててもらいたい。
 天守台最上段に当たる石の四隅で巨大なイカ形の隅石が見つかったことや約100年前の石垣修理の際の地鎮祭で使われたとみられる徳利(とっくり)やお猪口(ちょこ)、密教法具などが天守台下から発見されたのも記憶に新しい。イカ形の隅石は、その特異な形状が目を引き、市が「いかすみ石」と名付けて展示するなどし、多くの注目を集めた。観光資源としての弘前城について、幅と奥行きを与えるこうした遺構、遺物の発見が今後も続けば、弘前城・弘前公園の価値がさらに高まるだろう。今後の調査に期待したい。
 新発見といえば、元日付の本紙で報じた謎の櫓(やぐら)の写真発見のニュースも興味深いものだった。現存する弘前城の櫓の他にも同城には櫓が存在したが、今回発見された櫓の絵はがき写真が北の郭にあった子櫓ではないかというもの。本物であるならば、明治時代に花火による火災で失われた子櫓の現存する唯一の写真となるだけに、その資料的価値は非常に高いだろう。明治期の弘前公園の姿を捉えた写真としても珍しいものだろうし、他の櫓との構造の違いなども比較することができ、学術的な価値も高いに違いない。
 弘前公園を舞台に開かれる弘前さくらまつりは、今年100周年の記念すべき節目の年。市民としてもいま一度、弘前公園に注目し、家に眠っているかもしれない資料などを探してみるのもいい。新しい発見は弘前城・弘前公園をさらに市民に身近な存在にしてくれるだろう。

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