Home > 社説 > 地方紙 > 北海道・東北地方 > 東奥日報(青森県) > 【東奥日報】 新時代の「象徴」どう描く/天皇退位 準備本格化
E070-TOO

【東奥日報】 新時代の「象徴」どう描く/天皇退位 準備本格化

そう思わないそう思う (まだ投票していません)
Loading...

 天皇陛下の退位日が「2019年4月30日」に正式に決まり、現行憲法下で初となる逝去によらない代替わりに向け準備が進められている。近く政府の準備組織の初会合が開かれ、退位や即位に伴う儀式の在り方の調整に入る。
 次第に慌ただしさが増す中、陛下は昨年12月、84歳の誕生日を迎え「残された日々、象徴としての務めを果たしながら、次の時代への継承に向けた準備を関係する人々と共に行っていきたい」と語った。16年8月に退位の意向をにじませたビデオメッセージにあったように「全身全霊」で公務を全うしたいとの思いが伝わる。
 ただ、この1年余りを振り返ると、特例法に盛り込む制度設計の検討に多くの時間が費やされ、陛下が身をもって示した象徴天皇の在り方について議論は深まらなかった。平成に次ぐ新たな時代の天皇像をどう描くか。国民一人一人が考えてみるときだろう。
 ビデオメッセージの公表を受け、政府が設置した有識者会議は約半年の検討を重ね、昨年4月、一代限りの退位に向けた最終報告書を安倍晋三首相に提出した。一方、衆参両院の正副議長は特例法制定を求める国会見解をまとめ、各党派の意見を集約。6月の特例法成立に至った。
 メッセージで陛下は「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添う」という、自ら実践してきた象徴天皇の在り方に触れた。陛下は被災地訪問や太平洋戦争激戦地への慰霊の旅など、憲法が定める国事行為ではない公的行為を重んじてきた。それは一つの問題提起にもなった。
 ただ有識者会議は、象徴天皇の在り方などの問題には踏み込まなかった。仮に議論が紛糾すれば、当面の退位問題が進まなくなる可能性があったためとされる。
 多くの国民は退位を自然に受け入れ、支持したが、「天皇は続くことに意味がある」と反対した人もいる。天皇観を巡る対立は思いのほか深い。保守派が皇位を男系男子で継承していくため、戦後に皇籍を離れた旧宮家の復帰にこだわるのも、その一例だ。
 象徴天皇はどうあるべきかは、天皇自身の考えや時々の社会情勢で変化する。退位まで約1年4カ月。国民的な議論を通じ、次代の天皇像を形づくっていくべきであり、皇位の安定継承や皇族減少への対策などの課題についても、議論を加速させたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。