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【読売新聞】 社会保障 医療・介護の持続性確保せよ

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 ◆「全世代型」への転換も急ぎたい◆
 人口減と超高齢化の下で持続可能な社会保障制度を確立する。今年は、その正念場を迎える。
 大きなテーマが二つある。一つは「人生100年時代」を見据えた医療・介護体制改革、もう一つは高齢者中心の給付から現役世代も含めて支える「全世代型」への転換である。
 日本の総人口は2008年をピークに減少に転じた。出生率が現状のままなら、今の1億2700万人が65年には8800万人にまで減る。高齢化率は27%超から4割近くまで上昇する見込みだ。
 ◆改革のラストチャンス
 団塊の世代の高齢化に伴い、今後は75歳以上の高齢者の割合が急速に高まる。医療・介護ニーズの激増は必至だ。いかに費用の膨張を抑えつつ、必要なサービスを確実に提供するか。社会保障の安定にとって最大の課題である。
 今年4月は、6年に1度の診療・介護報酬の同時改定や、次期医療計画スタートなどが並行する重要局面だ。団塊の世代が全て75歳以上になる25年を前にした改革のラストチャンスと言える。
 高齢化で疾病構造は変化している。生活習慣病や認知症が増え、多くの高齢者は複数の持病を抱える。手術などの集中治療で完治を目指す医療から、慢性病患者の暮らしを支える医療への変革が求められている。
 高コストの重症者向け病床は絞り込み、退院支援を担う回復期向け病床や在宅医療を充実させる。介護との連携を密にして、医療から介護へのシフトを進める。
 高齢社会のニーズに合った効率的な体制を作り、サービスの質向上と費用抑制の両立を図ることが重要だ。報酬改定では、その方向に沿ってメリハリをつけたい。
 都道府県では、将来の医療需要を踏まえた地域医療構想の具体化作業が進行する。医療機関と協議して病床再編を果たせるか。都道府県の力量が問われる。
 患者が受診先を自由に選べる「フリーアクセス」をどうするかも論点だ。患者の大病院集中や重複受診の一因とされる。かかりつけ医を通じた受診調整で、緩やかに制限するのが現実的だろう。
 介護では、軽度者向けのサービスの見直しが必要だ。財源と人材が限られる中、重度者に給付を重点化することは避けられない。
 訪問介護で調理や掃除をする「生活援助サービス」は、将来的に市町村事業に移管するのが望ましい。市町村には受け皿整備を急いでもらいたい。地域のNPOやボランティアの活性化は、地域再生にもつながるはずだ。
 ◆待機児童解消が優先だ
 日本は、保育関連など家族向け公的支出の対国内総生産(GDP)比が欧州諸国の半分程度だ。支援の不足が少子化を招いている現状を改めるために、「全世代型」への転換が急務である。
 問題は、政府が幼児教育・保育の無償化をその重点施策としている点だ。昨年末にまとめた経済政策パッケージで、3~5歳児について一律に無償化することなどを打ち出した。昨秋の衆院選の自民党公約にこだわったのだろう。
 保育所などの利用料は、既に保護者の所得に応じて減免されている。一律の無償化は高所得層ほど恩恵が大きく、優先度は高くない。
 子育て世代の切実な願いは、保育所に入れない待機児童の解消である。無償化が先行すれば、入所できた世帯とできなかった世帯との不公平が一層拡大する。保育所の整備や保育士の配置拡充といった質の向上こそ、優先すべきである。
 待機児童の解消をはじめ、安心して子育てできる環境作りには、社会保障・税一体改革で想定した以上の財源が要る。「全世代型」の実現に向けて、政府・与党は負担増の議論から逃げず、一体改革を再構築しなければならない。
 ◆働き方改革の推進を
 労働力人口が減る中、子育てや介護と両立できる働き方を広め、女性や高齢者など多様な人材の参入を促すことが欠かせない。社会保障制度を維持する上でも、支え手の拡大は大切だ。
 長時間労働の常態化は、女性の活躍を阻み、過労自殺などの悲劇も生んできた。低賃金で教育訓練の機会も乏しい非正規雇用の増加は、社会や経済の活力を奪う。
 政府は昨年3月、働き方改革実行計画をまとめた。残業の上限規制と、雇用形態で賃金差をつけない「同一労働同一賃金」の推進が柱だ。通常国会に関連法案を提出する。早期成立を求めたい。
 働き方改革は、政府が掲げる「1億総活躍社会」の実現の要だ。官民で推進する必要がある。

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