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【高知新聞】 【新成人の門出に】希望にその目を見開いて

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 大手通信カラオケで歌われた昨年の曲の順位で、10~50代の全世代でベスト20に入った歌がある。「ひまわりの約束」という歌だ。
 4年前のヒット曲で、〈僕〉が〈どうして君が泣くの〉と問い掛けて歌い始める。優しい歌声で〈君〉を励まし、一緒に〈幸せ〉を探し出そうと約束する。
 穏やかなまなざしが浮かぶ。裏返せば、現実社会が不穏であるが故、この歌が世代を超えて共感を広げているのかもしれない。
 今年もあす新成人が門出の日を迎える。全国で123万人、県内で約6400人が大人になっていく。
 新しい感性と活力が大人世代に注ぎ込まれる。社会をより多彩に、豊かにしていかなければならない。次の世代への約束と、未来を開く責任を大人は負う。
 新成人が過ごしてきたこの20年、大人たちはその約束と責任を果たせてこれただろうか。
 日本はバブル崩壊後、低成長時代に迷い込んだ。銀行などの破綻が現実化し、「戦後最悪」の不況が吹き荒れた時代に新成人は生まれた。貧困や格差といった社会のひずみが顕在化する中で育った。
 多感な10代には、旧民主党による政権交代、さらに自民党の政権奪還という、「失望」と「数の力」の政治劇が繰り広げられた。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で、「安全神話」が崩れ去るのを目の当たりにした。若者が進む先の羅針盤はかき乱された。
 そして、5年を超える安倍政権下のこの国に生きる。
 政権はアベノミクス効果による景気回復に高揚感を漂わせる。若年層の支持率が高い傾向も見られる。だが、若者たちが抱く実感や本心はどうか。
 少子高齢化への処方箋が示されない中で将来展望を描くのは難しい。本県の人口は昨年ついに72万人を割り、戦前水準にまで減った。
 日本を取り巻く国際情勢も危うい方向へ急旋回している。北朝鮮問題などで軍事的緊張が強調され、「有事」という物騒な言葉が現実的な危惧として飛び交う。
 新成人は2年前に導入された18歳選挙権が初めて適用された。歴史的改正だったにもかかわらず、投票率は低迷した。政治への無力感の訴えのように思う。
 先を見通しにくい時代だ。そうではあっても、未来に向ける目を閉ざすのはやめよう。戦禍をはじめ幾多の難局から、先人たちが将来を見据え、復興を成し遂げてきた歴史に学ぶべきことはあるはずだ。
 若い世代もまた不安な時代を地域で踏ん張りながら耐えてきた。苦難の中で想像力や正義の芯は鍛えられる。希望を見失いがちな時代にこそ新しい息吹が必要だ。
 〈未来〉への旅立ちを歌う「ひまわりの約束」は「ドラえもん」の映画主題歌だ。ドラえもんが愛されてやまないのはなぜか。その普遍的な問いの中に光が見える気がする。

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