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【中国新聞】 医師の偏在 実効性ある打開策急げ

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 都市部の医師ばかりが増え、そのあおりを中山間地域が受ける「偏在」の問題が、なかなか解消されない。このままでは、地域の疲弊が加速する。
 2005年から分娩(ぶんべん)ができなくなっていた庄原市では年明け、庄原赤十字病院の産科が4月から再開するという朗報が舞い込んだ。地域を勇気づけたに違いない。ただ、広島県内の過疎地域では産婦人科に限らず、外科や救急などでも医師不足に変わりはない。
 「医療崩壊」にあえぐ地方の声を受け、08年から国は医師の総数を増やしてきた。主として、地方で一定期間働くことを条件に奨学金の返済を免除する「地域枠」の医学生を増員してきた。だが、それだけで偏在は解消されそうもない。
 より強力で新たな手を打つ必要がある。厚生労働省の有識者会議「医師需給分科会」が昨年末に対策を取りまとめたのも、危機感の表れだろう。これまでは勤務地や診療科を医師が自由に選ぶことを尊重してきたものの、今回は踏み込み、「一定の規制」にも触れた。
 その姿勢は評価できるとしても、示された具体策に実効性をどれほど持たせられるかについては疑問が残る。
 医師不足の地域での勤務経験を評価し、認定する制度の創設もそうだ。問題は、この認定をどう生かすかだろう。
 現時点では、新たな認定を地域の基幹病院の院長になるための条件とする案が有力らしい。ただ、それだけでは対象者が限られよう。当初は、個人で開業するための条件にする案も検討されていた。より多くの医師に、この認定がプラスに働くよう工夫する必要がある。
 加えて、経済的な恩恵を検討してもいい。認定された医師の報酬を高くし、そうした医師が多い病院の報酬も高くする—。そうした診療報酬の見直しも視野に入れるべきではないか。
 分科会の提言では、医師の偏在を「見える化」することも求めている。人口や高齢化率、通院しやすいかどうかなどを総合的に判断し、どの地域で、どの診療科の医師が足りないのか、誰の目にも分かるよう示すことは大切だろう。ニーズに基づき、医師を配置する。そんな当たり前のことを実行する基盤が整うからだ。
 さらに、待ち受ける難題からも逃げるわけにいくまい。医師の働き方改革である。
 救急など当直が不可欠な病院では、中山間地域はとりわけ少ない人数で回さざるを得ず、時間外労働が多くなってしまう。過労死を招きかねない過酷な労働も、医師不足の地域に医師が来ない理由の一つだろう。
 政府は働き方改革として、残業時間の上限を設けようとしている。医師には5年の適用猶予があるとはいえ、例外ではない。医師不足の病院が本気で労働時間を減らそうとすれば、どうなるか。当直が回らず、夜間は病院を閉めざるを得なくなる…。そんな最悪のシナリオまで頭をよぎる。
 何とか早く、医師の偏在を打開する手を打たねばならない。分科会の取りまとめ策を受け、厚労省は今月22日召集の通常国会に医師法などの改正案を提出する見込みである。より実効性のある対策となるよう、活発な議論を求めたい。

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