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【京都新聞】 宇宙基本計画  米国追従に懸念拭えず

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 米国の新たな宇宙ステーション計画に参画し、米軍の宇宙作戦を巡る多国間演習へも自衛隊が初めて参加する-。
 政府の宇宙開発戦略本部が昨年末に改定した宇宙基本計画の工程表は、宇宙分野でも米国との連携が色濃く反映された。米国と足並みをそろえることで開発競争の出遅れを避け、発言力を保ちたいとの思惑が透ける。とはいえ米国追従は平和利用を大原則にしてきた日本の宇宙開発にとって大きな曲がり角と言える。
 新工程表で注目すべきは、米国が2020年代後半の完成を予定する月を回る宇宙ステーション計画に加わり、日本人による月面探査につなげる内容を盛り込んだ点である。月探査の拠点とし、有人火星探査の中継基地としても利用する計画で、昨年11月の日米首脳会談時に宇宙探査の協力推進で一致し、急きょ工程表に入れられた。
 この計画は、オバマ前米政権がいったん中止し、日本も参加に消極的だった。しかし昨年秋にロシアが協力を表明し、トランプ大統領が改めて復活を決めた。ただ火星探査のためにオバマ政権が進めた宇宙船の開発などを踏襲する形で新味に欠け、実現時期も示されていない。米国がどこまで費用や責任を受け持つのかもあいまいだ。
 確かに有人宇宙開発を日本単独で進めるには巨費を要し、開発競争で他国から水をあけられる恐れがある。多くの国と資金と技術を持ち寄って進めるのが得策だろう。日本が得意とする無人の物資補給機などの技術で貢献し、日本人が初めて月に降り立つ可能性も高まる。
 だが、果たして国際協力の輪が広がるのか見通せない。24年まで運用される国際宇宙ステーションの後継計画を巡り、欧州宇宙機関は月面での有人基地構想を掲げる。中国は独自の月面基地計画を練り、インドやアラブ首長国連邦も自前の有人宇宙飛行を目指している。
 日本は長期構想を明確に示さず、自律性を欠いたまま米国にのみ追従していて大丈夫だろうか。まずは日本が月を目指す意義や、得られる成果を国民に分かりやすく示す必要がある。
 もう一つ、新工程表で陸海空に次ぐ「第4の戦場」とされる宇宙空間での防衛協力に一歩踏み込んだのも気掛かりだ。
 自衛隊が参加を目指すのは、米空軍宇宙司令部が今秋に行う「シュリーバー演習」。宇宙空間で自国の衛星が電波妨害や攻撃を受けた場合などを想定して机上演習を行うという。一昨年は英国やフランスなど6カ国が参加した。宇宙分野の協力強化を定めた15年の日米防衛協力指針を踏まえた対応だが、背景には昨今の北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事面での宇宙開発加速に対する強い懸念がある。机上演習であっても、互いに警戒感が強まるのは必至であり、慎重な配慮が欠かせない。
 宇宙開発は、子どもたちに科学に対する大きな夢と勇気を与える。他の産業への波及効果が大きい成長分野であり、基盤強化に異論はない。宇宙開発技術の多目的利用は避けて通れないとはいえ、平和目的の大原則を忘れてはなるまい。

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