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【デーリー東北新聞】 科学展望 日本は失速、深刻な危機

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 今年は明治維新から150年。この間、科学技術の革新が社会の原動力になってきた。今も進歩は人工知能(AI)やコンピューター、ロボットなどで加速している。それを人々の幸福や平和につながるように活用していきたい。しかし、日本の科学はまさに「失速」の深刻な危機にある。
 2000年以降、日本人のノーベル賞受賞者は増え続け17人に上り、日本は科学大国として評価されるようになった。ただ、ノーベル賞は20〜40年前の業績に与えられるケースが多く、現在の実力を反映しない。皮肉にも同じ時期に日本の研究現場の衰退が進んだ。特に04年の国立大学の独立行政法人化以降、運営費交付金が1割も削減され、疲弊した。大学の文部科学省への依存が強まったことは昨年の大量違法天下りで露呈した。
 英科学誌ネイチャーは昨年3月「日本の科学研究は失速」との記事を掲載した。それによると、自然科学系68誌に載った論文の著者は12年から16年まで中国が48%、英国が17%増えたのに、日本は8%減った。政府の科学予算の伸びでも、中国の躍進と対照的に日本の地盤沈下は著しい。量と質共に日本の科学の停滞は否めない。
 予算が抑制されれば「選択と集中」の下、短期的視点が重視され、自由な基礎研究は先細りする。昨年末に助成金詐欺容疑で逮捕、起訴されたスーパーコンピューター開発のベンチャー企業社長には、国から計100億円の資金投入が決まっていた。ばらまきの利権構造と研究費の枯渇は裏表の関係にある。
 研究不正も後を絶たない。昨年は分子生物学で著名な東大教授の論文に捏造(ねつぞう)、改ざんが指摘された。多額の研究費を確保するため無理に成果を示そうとしたのか、教授権限が強過ぎて自由な議論も不足していた。研究環境改革は大きな課題だ。
 安定した研究職に就く若手が減り、30代になっても非常勤職を渡り歩く博士研究者が目立つ。研究者が魅力的職業でなくなった。こうした窮状に対する政策の検証が欠落している。日本の科学の失速は多くの要因が絡み合いV字回復は難しいが、着実に改めていくべきである。
 15年に始まった重力波観測は中性子星合体を突き止め、宇宙のイメージを変えだした。14年に打ち上げた日本の探査機「はやぶさ2」も今夏、小惑星りゅうぐうに達する。科学を台無しにしかねない米トランプ政権を乗り越え、多様な発見が今年も続くだろう。日本も失速から抜け出す道を探る年にしたい。
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