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【信濃毎日新聞】 憲法の岐路 知事会改憲案 生煮えで示されても

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 全国知事会の作業部会が独自の改憲草案を発表した。92条にうたわれている「地方自治の本旨」規定の中身を明確化するのが柱だ。
 〈地方公共団体の組織および運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める〉。92条である。本旨とは何かの説明はない。
 明治憲法に地方自治の規定はなかった。知事は政府が任命する官僚だった。憲法に「第8章地方自治」の項を設け、知事、市町村長や議会議員を公選制にしたのは戦後改革の柱の一つだった。
 それなのに肝心の部分が曖昧だ。徹底した分権型を目指したGHQ(連合国軍総司令部)と旧体制を維持したい日本側とのせめぎ合いの結果という見方がある。
 ▽住民は国民主権の原則に基づき地方自治に参画する権利を持つ▽地方公共団体固有の権能は国政で尊重される▽国は地方自治に影響を及ぼす政策の企画、立案、実施に当たっては地方との協議の場を設けなければならない。
 草案にはこんな中身が盛り込まれている。本旨の意味はかなりはっきりしてくる。
 それでも、今度の案には問題が多い。理由は三つある。
 第一に、本旨の意味を明確化するには必ずしも憲法を変えなくても済むことだ。地方自治法を抜本改正する、あるいは地方自治基本法を制定して本旨の意味を盛り込む、といったやり方がある。その方が手っ取り早いし国民に理解されやすいだろう。
 第二は議論が生煮えなことだ。知事会が全国の知事47人を対象に行ったアンケートでは、8項目の改憲項目に対し「賛同する」と答えた知事はそれぞれ36〜21人にとどまった。「趣旨は分かるが幅広い議論が必要」といったコメントが多く寄せられている。
 そして第三に打ち出したタイミングだ。安倍晋三首相は今年中の改憲発議を目指している。国民の間には慎重論が根強い。
 そんな中での改憲案提示である。改憲を急ぐべきでないと考える人たちにとっては、知事会が首相を後押ししている、あるいは改憲の動きに便乗しようとしていると見えておかしくない。
 地方自治の豊かな展開を妨げているのは憲法なのか。そうではあるまい。政治家と官僚が分権を骨抜きにしてきた経緯がある。知事会が今やるべきは、国に要求して分権改革を再始動させることだ。 (1月8日)

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