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【中国新聞】 コメの減反廃止 地域実態に合う農政を

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 日本のコメ作りはことし、大きな転換点を迎える。国が生産数量目標の指示、配分から手を引き、各地域が自主的に作付面積や生産量を決める仕組みに移行する。1971年から半世紀近く続いてきた生産調整、いわゆる「減反」が廃止される。
 そもそもは生産過剰による値崩れを防ぐ狙いで、国は交付金分配などで農家に減反を求めた。現政権はこれが現場のやる気や創意工夫を損ない、農業の足腰を弱くさせたと指摘する。
 そうした一面も実際あったのかもしれない。ただ農家を取り巻く厳しい環境にしっかり目を向けて将来ビジョンを示し、場合によっては公助の手を差し伸べるのも政治の責任だろう。
 国は今後もコメの需要予測を示すが、原則として市場原理に委ね、減反協力の交付金は打ち切る。家畜の飼料米生産を促す補助制度は既にある。農家の自主性を尊重するとした、現政権の訴えは聞こえがいい。ただ判断を委ねられる現場が戸惑いや不安を抱くのは無理もない。
 食生活の変化や人口減でコメの消費量が減る中、農家はせめてもの米価安定を願ってやまない。そこで東京、大阪以外の45道府県はそれぞれ生産量や作付面積の「目安」を設定し、その情報を共有する全国組織を農協が立ち上げた。引き続き生産調整の枠が一定に残る形となる。
 ある意味で国の責任放棄と言えなくもない。年700億円超の交付金廃止こそが、真の狙いだったのではないかと思える。
 コメを作付けしない代わりに10アール当たり7500円が支払われてきた。この交付金がなくなると、赤字覚悟で何とか踏ん張ってきた小規模零細や兼業農家への影響は決して小さくない。
 大規模な集落法人では数百万円の減収が見込まれる。就農や定住の受け皿でもある営農集団が揺らげば地域の将来に影を落とす。法人設立で先進県の広島はなおさらで、経営が厳しくなるだけでなく、離農や耕作放棄に拍車が掛かる恐れもある。
 副作用の大きい農政転換に踏み切った背景には、ことさら競争心をあおる現政権の姿勢が垣間見える。米国離脱後も環太平洋連携協定(TPP)にこだわり、国会で十分な説明をせぬまま欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に突き進む。工業製品の輸出増ありきで、農業が二の次になっていないか。
 「強い農業」、成長産業化、輸出倍増…。現政権が思い描くようなばら色の農業は考えにくい。そもそも平地で広大な北海道や東日本の水田と、山あいで手間のかかる中国地方のコメ作りを同列に語るのは無理がある。減反廃止とともにいっそ全国一律の農業政策も改め、地域の実態に合った補助金制度や支援策を打ち出すべきではないか。
 国内需給を見る限り、コメの自給にことさら不安を感じる必要はないという声もある。ただ四半世紀ほど前、冷夏による不作で起きた「平成の米騒動」を忘れてはならない。人口爆発や異常気象、国際紛争などのリスクを考えれば食料安全保障の視点がより大事になるだろう。
 コメは基幹作物で、米作の衰退は農業経営の根幹を揺るがし、ひいては地域社会の存続にも関わる。消費者もわが身の事と捉えるべきだ。茶わんに盛られたご飯の向こうにある「農」の営みに目を向けたい。

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