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【西日本新聞】 成人の日 新しい社会 切り開く力に

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 〈選挙人名簿に登録終えし妻サイネリヤを買い抱きて帰りぬ〉
 つましい暮らしの中、20歳になった妻の洋子さんが選挙権を得て心が弾み、つい花屋で鉢植えを買ってきた。故松下竜一さんのデビュー作「豆腐屋の四季」にある美しい挿話と歌である。
 きょう「成人の日」を迎えた皆さんの門出を祝って、この歌を贈りたい。
 1968年の「豆腐屋の四季」から半世紀が過ぎた。この間、日本はバブル経済とその崩壊を体験した。新成人はその後、社会に格差が広がり、雇用の流動化が始まったころに生まれた世代である。
 大学の学費が高額化し、学生の半分程度が奨学金を利用している。苦学を余儀なくされ、過酷な「ブラックバイト」で学業に支障を来す学生もいると聞く。就職戦線は学生有利の「売り手市場」とされる。とはいえ、働く人の約4割は不安定な非正規労働者だ。
 少子高齢化は今後も進み、少ない働き手で多くの高齢者を支えなければならない。国の内外で分断と対立をあおる言動が広がり、不寛容と排外主義の風潮が高まっている。新成人がこぎ出すのは、こうした難問が山積した社会だ。
 「大人の仲間入り」といわれ、困惑する人もいよう。政府は選挙権年齢に続き、民法改正で成人年齢も18歳に引き下げる方針だ。「まだ20歳」ではなく、「もう20歳」と自覚し、大人に求められる責任に向き合ってほしい。
 新成人の多くは既に投票を経験し、身が引き締まる思いをしたことだろう。かつて洋子さんが花に託した喜びと誇りも感じたに違いない。責任を引き受けることで、私たちは成長していく。
 昨年の衆院選では、政治参加を呼び掛ける若者たちの行動が各地で目を引いた。熊本地震や九州豪雨災害では、多くの若者たちがボランティアに汗を流した。
 新しい社会を切り開くのは、いつの時代も若い力だ。試行錯誤は当然である。大人の先輩として新成人を温かく迎え、迷っていたらそっと背中を押してあげたい。

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