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【産経新聞】 原子力エネルギー 基本計画に確たる位置を 国産の高温ガス炉に夢託せ

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 今年はエネルギーに関する国の方針を定めた「エネルギー基本計画」の改定年に当たっている。
 平成26年に策定された現行の同計画は、東京電力福島第1原子力発電所事故後の政府の逡巡(しゅんじゅん)が色濃くにじむ内容だ。
 原子力を「重要なベースロード電源」とする一方で、原発依存度は「可能な限り低減させる」と相いれにくい表現を含んでいる。
 事故から満7年を迎える中での基本計画見直しでは、わが国のエネルギー自給率の低さを再認識した上で、エネルギー安全保障やパリ協定の約束履行などを視野に入れ、原子力規制委員会の審査に合格した原発の積極利用を図るべきである。
 ≪リスク跋扈の源を絶て≫
 国内には42基の原発が存在するが、3・11後に運転を再開できたのは、5基にすぎない。
 そのうちの四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)は、昨年12月に広島高裁による仮処分で運転差し止めを命じられた。その結果、稼働中の原発は、九州電力と関西電力の計4基となっている。
 反対派住民からの原発停止を求める仮処分の申請は、複数の地裁や高裁に対して行われている。結果は、却下と是認に分かれ、立地地域の社会と経済は少なからぬ混乱を被っている。
 即効力を持つ仮処分は、明らかな危険が目前に迫っている場合に採られる緊急措置である。
 規制委によって厳格な新規制基準への適合性が認められた原発を強制停止させること自体、仮処分という法制度の乱用ではないか。「司法リスク」という流行語さえ生まれている。この現状については法曹界での検討を望みたい。
 また昨年12月には東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の安全対策の「審査書」が規制委によって了承された。残す審査項目もあるが、事実上の合格だ。
 この2基の再稼働は東電の経営立て直し、ひいては福島の被災地復興加速に直結する必須のステップなのだが、新潟県の米山隆一知事は「県独自の検証がなされない限り、再稼働の議論は始められない」と公言している。
 知事に再稼働を左右する法的権限はないのだが、政府は事態を傍観し続けている。この結果、原発の安全審査において、規制委と県による2つの審査の併存が既成事実化しつつある。
 このままでは規制委の判断が県の審査によって否定されるケースもあり得るわけで、混乱が増幅される一方となりかねない。
 柏崎刈羽原発に難色を示し続けた前任者の泉田裕彦氏は退任後、自民党の国会議員に転身した。その処世も知事による反対の真意を分かりにくいものにしている。
 「知事リスク」と「司法リスク」の跋扈(ばっこ)は原発への安倍晋三政権の姿勢が定まらないことに起因する不安定事象に他ならない。
 ≪政権は積極姿勢みせよ≫
 政府は現在、見直し議論が進む次期「エネルギー基本計画」において、原子力の安全利用の必要性を理詰めで明確に示すべきだ。
 具体的には今後の原発高経年化に備え、新増設や建て替えについても書き込む必要がある。電力会社が原子力発電に安定的に取り組める制度設計も求められる。
 それが日本の平和と発展を確実にする道である。規制委の緩慢な安全審査をはじめとし、原発を取り巻く諸環境が今のままでは、パリ協定の履行さえ絶望的だ。
 新年を迎えた日本の原子力発電に、7年間のトンネルの向こうから一条の光が差してきた。
 日本原子力研究開発機構が開発した次世代小型原子炉「高温ガス炉」の存在だ。ポーランドへの技術輸出と建設が具体性を帯びてきている。
 原子炉の熱を安定なヘリウムガスで取り出す高温ガス炉は、運転用の水がいらない。配管破断や電源喪失が起きても炉心溶融に至らない。大型化はできないが、運転も容易で安全性が極めて高い。
 以前は原発大型化の流れの中で出番がなかったが、世界的な安全志向の高まりで、一躍脚光を浴びる期待の星になってきた。
 ポーランドでの実用化を日本の高温ガス炉技術を世界標準とする好機とすべきだ。次世代炉の開発は、若手研究者を原子力分野に導く魅力に満ちている。
 今年を、日本の原子力利用の再出発と新たな研究開発の元年として輝かせたい。

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