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【陸奥新報】 カヌー・ドーピング「自らを律する強さを持ちたい」

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 昨年9月に石川県で行われたカヌー・スプリント日本選手権で、鈴木康大選手がライバルの小松正治選手の飲み物に禁止薬物を混ぜたことが明らかになった。世界のスポーツ界がドーピング問題に悩まされる中、トップ選手による前代未聞の悪質な行為が国内で発生した。
 小松選手はレース後の検査で陽性反応を示し暫定的に資格を停止されたが、鈴木選手が自らの行為を申し出たことで資格停止は取り消された。2016年のリオデジャネイロ五輪で、カヌースラローム男子の羽根田卓也選手が日本勢初の銅メダルを獲得し、競技の注目度が増していただけに、関係者らの落胆は大きい。
 鈴木選手は今回の薬物混入のほかにも、東京五輪招致が決まる以前の10年ごろから、ライバル選手の用具を盗んだり、細工したりする妨害行為を繰り返していたという。国内で開催される五輪に出場したい―という焦りなどから行っていたという。身勝手というほかなく、弁解の余地はない。
 日本アンチ・ドーピング機構は鈴木選手に8年間の資格停止処分を科し、日本カヌー連盟は、最も重い除名処分を科すよう臨時総会などに提案するという。競技に勝つため、自ら禁止薬物を服用することはもちろん許されないが、その罪を他の選手に着せようとした行為はより悪質だ。連盟の方針は当然だろう。
 今回の一件はスポーツ界全体に大きな波紋を呼んだ。過去の五輪でドーピング違反者を一人も出していない日本は、“クリーン”を掲げて東京五輪の招致に成功したのだが、その信頼が揺らぐ事態となり、早急な対応を迫られている。
 国内のスポーツ界からは、鈴木選手の行為を悲しむ声が相次いだ一方で、被害に遭った選手、競技団体双方の認識の甘さを指摘する声も上がる。04年のアテネ五輪陸上男子ハンマー投げ金メダリストの室伏広治さんは、飲み物のボトルを一度開けて席を離れた場合、二度と飲まないのは当たり前―とし、競技団体が選手の指導を徹底すべきと提言する。
 選手たちは五輪出場権をめぐり激しく争い、出場した場合は好成績を収めなければならないという重圧を背負うことになる。彼らの重圧は周囲の想像をはるかに超えるものであろう。そう考えれば、選手には禁止薬物などから自らを守る意識も必要なのかもしれない。
 組織的ドーピングにより、2月の平昌冬季五輪への選手団派遣を禁じられたロシアを、他山の石とすべきところだったが、今回の件を受け、日本国内の関係者はドーピング対策に「当事者意識」を持って一層強い姿勢で臨まなければならない。ただ、選手が自らを律することができなければ、いくら対策を講じても再発を完全に防ぐことは困難だ。自らを律する強さを持ってこそ、国を代表する選手と言えるのではないだろうか。

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