Home > 社説 > 地方紙 > 四国地方 > 高知新聞(高知県) > 【高知新聞】 【カヌー選手問題】なぜ愚行に走ったのか
E255-KOCHI

【高知新聞】 【カヌー選手問題】なぜ愚行に走ったのか

そう思わないそう思う (まだ投票していません)
Loading...

 日本のスポーツ界の話なのかと、耳を疑う「事件」である。
 昨年開かれたカヌーのスプリント日本選手権で、鈴木康大選手が小松正治選手の飲み物に禁止薬物を混入させていたことが分かった。
 2020年東京五輪出場を目指しライバルを陥れるための行為だったという。実際、小松選手はドーピング検査で陽性反応が出て、暫定的な資格停止処分になっていた。
 卑劣な行為というしかない。禁止薬物を自分で摂取するよりもはるかに悪質だ。
 国際スポーツは、ロシアの国ぐるみのドーピング問題に揺れ続けている。ドーピングの根絶は以前にも増して最重要課題になっている。
 日本は模範的な国の一つであり、東京五輪・パラリンピックへの国際的な期待は大きいはずだ。その足元で今回の出来事は起きた。影響は計り知れない。
 鈴木選手は、別のライバル選手に対しても、競技に必要な道具を盗むなどの妨害行為を繰り返していたという。実態の究明や再発防止が急がれる。
 ことの重大性からは、競技団体の日本カヌー連盟の対応だけで済む問題ではあるまい。日本オリンピック委員会など国内スポーツ界を挙げて取り組む必要がありそうだ。
 連盟によると、鈴木選手は昨年9月に石川県で開かれた大会で、筋肉増強剤メタンジエノンを小松選手のドリンクボトルに投入した。小松選手がボトルから離れた隙に行為に及んだようだ。
 メタンジエノンは日本では入手することが難しく、海外遠征中に購入したという。当初から悪用目的で手に入れたといい、計画的だったことになる。
 トップ選手にとって、大会中に自分の飲み物から目を離さないのは鉄則とされるが、小松選手もまさかとの思いがあったろう。
 7歳年上の鈴木選手は良きライバルであり、憧れの存在でもあった。普段から親しく、ドーピング検査で陽性になった際も鈴木選手に相談したほどだ。
 ドーピングの疑いが晴れたとはいえ、小松選手が受けた衝撃は大きいだろう。せめてもの救いは鈴木選手が自ら告白したことか。
 理解に苦しむのは、トップ選手がなぜスポーツ精神にもとる行為に及んだかだ。
 五輪に出場経験がない鈴木選手は年齢的にも最後のチャンスという思いがあったようだ。若手が台頭する中で、「地元の五輪にぜひ出たいという焦りがあったと思う」とカヌー連盟幹部も指摘している。
 だとしてもあまりに愚かだ。結果至上主義に陥り、フェアプレーや勝敗を超えたスポーツの精神を獲得できていなかったのだとしたら、責任は個人にはとどまらない。スポーツ界全体で価値観や選手教育の在り方を問い直す必要がある。
 単なる個人のモラル問題に終わらせてはなるまい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。