Home > 社説 > 地方紙 > 中部地方 > 信濃毎日新聞(長野県) > 【信濃毎日新聞】 斜面
E175-SHINANO

【信濃毎日新聞】 斜面

そう思わないそう思う (まだ投票していません)
Loading...

時に伴走しつつ共に考え助言してくれる。そんな「メンター」がいれば心強い。企業のメンター制度は上司より「斜め上」の先輩が適任という。緊張感なく意見や本音を交わせるからだ。「おじさん」も人生のメンターになるだろうか
 
 
 ◆ 「漫画
 君たちはどう生きるか」は児童文学者の吉野源三郎が81年前に刊行した原作を、羽賀翔一さんが漫画化して昨年出版された。既に100万部を超えるベストセラーである。中学生のコペル君はおじさんとの対話から自分を見つめ生き方を考える
 
 
 ◆ 例えば仲間が上級生から暴行を受けた時。コペル君は仲間を見捨て逃げ帰った。自責の念に駆られ「死」を思い詰める。おじさんは説く。〈なぜそれほど苦しまなければならないか。それは君が正しい道に向かおうとしているからだ〉。渦中にいれば見えにくいかすかな光を示す
 
 
 ◆ 原作刊行の1937年は日中戦争が始まっった。天皇の名のもと軍国主義が強まり出版は厳しく監視されていた。治安維持法違反で検挙された経験もある吉野は、子ども向けの小説という形で次世代に伝えなければならないと思うことを記したのだろう
 
 
 ◆ 無意識のまま大きな力に同調し流れに身を任せてしまうのは今も変わらない。コペル君は考える。太陽のような大きな存在が世の中を回しているのではなく誰かのためにという小さな意志一つ一つがつながって僕たちが生きる世界は動いている、と。今こそ大切にしたいメッセージである。 (1月12日)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。