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【中国新聞】 世界同時株安 不測の事態に備えねば

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 米ニューヨーク市場の株価暴落を受け、世界の金融市場に動揺が広がっている。きのう、東京市場の日経平均株価は一時反発を見せたものの、終値では大きな回復に至らなかった。世界経済がどこに向かうのか、注視せねばならない局面だろう。
 おとといの米株価急落は過去最大級で、東京市場の下げ幅も一時1600円を超えた。アジアや欧州の株価も軒並み急落し世界同時株安の様相となった。こうした連鎖は、一昨年に英国が欧州連合(EU)からの離脱を表明して以来の事態である。
 先週末に公表された米国の雇用統計の内容が予想以上に良かったことが引き金になった。インフレ抑制のため米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースが加速するとの見方から、長期金利が大幅に上昇。企業の資金調達や住宅ローンも厳しくなるとの警戒感が広がり、株が売られることになった。
 大型減税や規制緩和で好況をことさらアピールする米トランプ政権にとっては、水を差された格好だろう。ただ足元の米経済は堅調で、もともと米株価は高過ぎるきらいもあった。投資家の損得勘定が働き、経済指標に敏感に反応するコンピューターの自動高速取引が乱高下を招いたとの指摘も聞かれる。
 とはいえ株価が実体経済の一面を映し出しているのは事実で決して予断を許さない。焦点は世界経済の行く末だが、専門家には二つの見方があるようだ。
 一つは、今回の株価暴落を機に「ミニバブル」とも称される相場熱が冷め、各国経済が健全な方向に軌道修正するだろうとの観測である。その一方で、これまで長く続いてきた景気拡大が後退局面に入るのではないかともいわれている。
 世界は「適温経済」という不思議な状況にある。好景気と低インフレ、低金利が同時進行するという、これまでは考えにくいことが起きているのだ。
 現在の景気拡大は10年前のリーマン・ショック対策で各国が講じた金融緩和が関係していよう。ただ市場にだぶつく資金が投機に流れ、財政健全化の意欲をそいだ。「適温」がいつまでも続く保証はないことを日本も肝に銘じておかねばならない。
 現に、欧米の中央銀行は政策金利の引き上げなど金融引き締めに乗り出している。とりわけ注目すべきは先日就任した米FRBのパウエル議長だろう。米議会や3月の金融政策決定会合でどんな方針を示すのか。米国はもとより世界経済の動向に目配りして、慎重な政策運営をするよう望みたい。
 日本経済は円安、株高、輸出増で緩やかな景気回復が進んでいるとはいえ、個人消費など内需に力強さはない。タイミングが悪いことに株安に加え、小幅ながら円高も進む中で春闘を迎えている。賃上げに前向きな考えを示していた輸出型企業が、消極姿勢に転じないか心配だ。
 政府と日銀には臨機応変の対応を求めたい。当面は金融安定化の観点から金融緩和策の継続を求める声が強まろう。ただ、欧米の中央銀行と足並みをそろえ、いずれ日本も異次元緩和の「出口戦略」を探るべきだ。4月には黒田東彦(はるひこ)総裁の任期切れが迫る。続投も取り沙汰されるが、惰性は許されない。不測の事態をどう乗り切るか、アベノミクスの正念場でもある。

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