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【中国新聞】 バス31路線廃止届 公共交通、再考の契機に

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 岡山市の両備ホールディングス(HD)は今月8日、傘下の両備バスと岡電バスが岡山県内で運行する路線バスのうち赤字31路線について、廃止届を中国運輸局に出したことを明らかにした。20路線は今年9月末に、残りを来年3月末に廃止する予定だという。
 対象の路線は岡山や倉敷、玉野、瀬戸内の4市にまたがり、1日当たり5千人を超す利用者への影響が気遣われる。「寝耳に水」と、沿線で不安に駆られる声が出るのは当然だろう。
 はた目にも、ずいぶん唐突で乱暴に映る。なぜ、こんな挙に出たのだろうか。
 グループの2社は、岡山市中心部と郊外の西大寺地区とを結ぶ黒字の基幹路線を走らせている。そこへ、100円均一の循環バスを売り物にする他社が参入を計画したのが背景らしい。両備HDは「3〜4割しかない黒字路線の収益で赤字路線を維持してきた」とする。競合による減収は明らかで、到底のめない話だったに違いない。
 参入を認可する国の方針が変わらないのを受け、公共交通の在り方を考え直してもらう「問題提起」に投じた一石だったと言う。記者会見で「あくまで路線網の維持が目的」と説明したのもそのためだ。
 ショック療法を狙った問い掛けでもあるのだろう。これほどの数の路線に差し障りがあるのを承知か、と。矛先の一つは、岡山市にほかなるまい。
 現行の地域公共交通活性化再生法では、「持続可能な地域公共交通網」づくりに自ら進んで取り組む努力義務を、自治体に課しているからだ。
 結局、中国運輸局は8日、開設を認可した。当の路線だけを考えれば、規制緩和で参入の門戸を開いている以上、当然の判断かもしれない。
 しかし、先に触れた法律にも「地域公共交通網」とある通り、この問題は線ではなく、面で考える必要があろう。赤字路線を盾に取る手法はともかく、地域協議会といった場を国や岡山市に求める両備側の言い分は、筋が通っている。
 地域公共交通の維持は、人口減少対策とも無縁ではない。言うまでもなく「交通弱者」には児童や生徒が含まれる。少子化で学校が統廃合され、通学の交通手段まで乏しくなれば、進学の選択肢は限られてくる。さらなる人口流出をもたらす悪循環に陥りかねない。
 両備HDは、ネコの「たま」駅長で知られる和歌山電鉄や広島県東部の中国バスなど、公共交通の再生で地域づくりに手を貸してきた。「公共交通がなければ地方は立ち行かなくなる」とする小嶋光信会長の訴えは、数々の現場を立て直してきた自負も手伝っているのだろう。
 無論、バスだけが公共交通を背負うわけではない。空き時間に自家用車を使い、希望する場所まで送り届ける配車サービスなど、シェア経済の市場が海外では広がりつつある。「乗用車も公共交通の手段に」といった発想転換もいずれ迫られよう。
 地域の公共交通網づくりには、自治体と交通事業者、そして住民や企業などが意識をそろえつつ、自ら考え、参画の道を自ら見いだす努力が欠かせない。地域の、地域による、地域のための公共交通を模索し合う場が求められる。

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