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【京都新聞】 札幌火災の現実  居住福祉の貧困浮き彫り

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 身寄りのない高齢者ら11人が犠牲となった札幌市の共同住宅火災。2週間近くがたち、浮き彫りになったのは、居住福祉の貧しさだ。
 生活に困窮する人たちが、安心して暮らせる住まいに、もっと目を向けるべきだ。
 悲劇は繰り返されている。
 昨年5月、北九州市のアパート火災で6人死亡。一昨年には川崎市の簡易宿泊所火災で11人死亡。ほかにも、同様の火災は後を絶たず、生活保護の高齢者や日雇い労働者らが犠牲になっているのが現実だ。
 札幌の共同住宅は木造一部3階建て。築50年近いとみられる旧旅館を借りて、生活困窮者を支援する合同会社が運営している。
 避難用の非常階段や避難計画はなく、灯油のポリ容器が大量に置かれていた。運営会社は「助けてあげられなくて、ごめんなさい」と防火体制の不備を認め、謝罪している。
 運営会社の責任は問われて当然だろうが、より根本的な問題を見過ごすわけにはいかない。
 スプリンクラーやスタッフの夜間常駐がなかったことが指摘されている。しかし、生活保護を受ける入居者らの支払いには限度があり、運営はぎりぎりの状態。費用のかかるスプリンクラーを設置する余裕がなかったという事情を、重く受け止めるべきではないか。
 共同住宅は無届けの無料・低額宿泊所か、無届けの有料老人ホームの可能性がある。しかし、無届けであっても、自治体は身寄りのない高齢者らを委ねてきたではないか。
 厚生労働省によると、届けのある無料・低額宿泊所は全国で537施設を数え、入居する1万5600人の9割が生活保護受給者。無届けは1207施設、入居の1万6千人超が生活保護を受けている。
 厚労省は無料・低額宿泊所に対する規制を強化し、無届けをなくす方針だ。消防法の順守など基準を設け、改善命令を出せるようにする。
 生活保護費を狙って劣悪な環境に入居させる「貧困ビジネス」の排除が目的の一つだが、規制で運営負担が重くなり、善意の施設が成り立たなくなれば元も子もない。規制だけでなく、スプリンクラー設置など住まいの改善に公的責任を果たすべきだ。
 昨年10月にスタートした「住宅セーフティーネット」は、高齢者や低所得者らを「住宅確保要配慮者」と位置づけている。入居を拒まない賃貸住宅を登録し、入居の壁をなくす国土交通省の取り組みだ。
 入居の負担軽減がうたわれながら、家賃補助は予算措置に委ねられ、実効性は未知数だ。とはいえ、住宅政策から福祉へのアプローチはこれまで欠けていたことだ。行政の縦割りを排した連携を強化すべきだろう。
 憲法25条は「健康で文化的な最低限の生活を営む権利」(生存権)をうたう。安全で安心できる住まいの確保は、人として生きるのに欠かせない。
 居住する権利がないがしろにされている。札幌火災の犠牲を繰り返さない施策は急務だ。

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