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【中日新聞】 人口減の先を見据えて 週のはじめに考える

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 将来の日本の人口維持をうたって政府が旗を振った「地方創生」の五年計画が折り返しの時期を迎えました。狙い通り、流れは変わるでしょうか。
 わたしたち一人一人の体重が同じと仮定したとき、日本全体でバランスを保てるようになる場所を「人口重心」といいます。
 最新、つまり二〇一五年に行われた国勢調査の結果から総務省が算出したところ、今回は岐阜県関市、武儀(むぎ)東小学校から東南東へ約二・五キロの地点となりました。 思うに任せぬ地方創生
 五年ごとの国勢調査のたびに発表される人口重心は、一九六五年には長良川の西側、岐阜県美山町(現山県市)にありました。おおむね東南東方向へ毎回数キロずつずれており、この五十年の間に長良川を渡って都合二十七キロも動いたことになります。
 そのベクトルの向かう先は、もちろん東京です。
 「二〇六〇年に一億人程度の人口を維持する」ことを目指し、政府が「まち・ひと・しごと創生総合戦略」、いわゆる地方創生の五年計画を策定したのは一四年の年末でした。
 掲げられた大きな目標が、少子化の背景となっている東京一極集中の是正です。
 東京五輪が開かれる二〇年には地方から東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への転入者と、東京圏から地方への転出者を均衡させる。具体的には、地方への新たな人の流れをつくって転出者を四万人増やし、転入者を六万人減らす。こうして一三年段階で年十万人を数えた転入超過を解消させる構想でしたが…。
 総務省が公表した昨年の人口移動報告を見ると、東京圏は、前年より千九百人ほど多い約十二万人の転入超過。つまり、思惑とは逆に、東京圏への転入超過が拡大してしまったわけです。 冷厳な事実を直視せよ
 地方創生の具体策として、例えば政府は中央省庁の地方移転を打ち出しました。でも、京都への全面移転を決めた文化庁を除けば、総務省統計局や消費者庁の一部移転にとどまる腰砕けとなりそうです。そんなことで、地方への新たな人の流れは生まれますか?
 総合戦略には「希望出生率一・八の実現」も掲げられました。
 一人の女性が一生に産む子どもの平均数を示す合計特殊出生率は現在、一・四前後。若い世代の結婚・子育ての希望がかなえば一・八程度の水準まで改善する。その実現に向けて出産・子育て支援を充実させる、というわけです。
 子どもを産みやすい、育てやすい環境整備が急務であることは、今さら言うまでもありません。大いに力を入れるべきです。
 しかし、たとえ出生率が一・八以上に改善しても、人口減に歯止めは掛かりません。その冷厳な事実から目をそらすことは許されません。
 厚生労働省が公表した人口動態統計の年間推計によると、昨年、国内で生まれた赤ちゃんは九十四万人余。二年連続で百万人を下回ることになりました。
 この先、百万人を回復することは、恐らく、ありません。
 出産可能年齢にある女性が当面減り続けることは、既に確定しています。だから、狙い通りに出生率が改善しても、計算上、出生数が増加に転じることはない。
 つまり私たちは、出生数の減少が続くことを受け入れて社会の将来像を考えるしかないのです。
 二〇二五年には、人口ピラミッドのピークを形成してきた団塊の世代が皆、七十五歳以上に。介護施設、高齢者施設の不足が言われます。
 日本社会は、団塊の世代の成長に合わせて教室を増やし、雇用を創出し、住宅を確保し、都市空間を整備・拡充させてきました。その最終段階にして正念場が迫ってきた、と見ることもできます。
 ここをしのげば、その先、さらに大きな器が必要になる世代は存在しません。
 つまり、私たちの社会は、容量不足の恐怖から解放される、と考えることができるはずです。 大きな器は持て余す
 広がりきった戦線を縮小し、いかにコンパクトな社会につくり直すか。大きな器を目指しても、持て余すばかりでしょう。
 ひたすら成長を追い求めてきた社会観や経済観から離れ、戦略的に小さくなる発想が求められるはずです。大型開発などを持ち出す前時代的発想とは決別しなければなりません。
 先を見据えてコンパクトな社会を目指すなら、財政健全化に背を向け、次世代に残す借金を積み増すことなどもっての外。加速する人口減に追い詰められてから社会をつくり直すのではなく、先手を打って前向きに縮小の展望を切り開きたいところです。  

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