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【朝日新聞】 若者の自殺 SOSの出し方伝える

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 若者の自殺が減らない。
 他の年代は2000年前後をピークに改善傾向にあるが、若者層は様子が違う。昨年は20歳未満の自殺者が556人と、前年に比べて7%増えた。20代も減り方が鈍く、なお年間2千人を大きく上回る。先進国の中で日本の若者の自殺率は高く、深刻な状況にある。
 考えられる原因は、家庭内の不和、進学・就職の失敗、いじめ、性の問題と多岐にわたる。学校、自治体、警察などの連携を、さらに強めてほしい。
 難しいのは、本人が周囲になかなか悩みを打ち明けないことだ。国立大生の過去23年分の自死事例を分析した福島大の内田千代子教授によると、ほとんどが学内の相談窓口も、精神科の医者も訪れていなかった。
 追いつめられたときに助けを求めようと思えるかどうかが、生死を大きく左右する。
 その観点から「SOSの出し方教育」に注目したい。
 先がけは東京都足立区だ。9年前から特別授業「自分を大切にしよう」を小中高でおこなっている。相談窓口の連絡先一覧を配り、心が苦しいときの対処法を保健師が教える。
 「信頼できる大人に話して」と伝えるのがポイントで、少なくとも3人に相談するように勧める。家庭環境に恵まれず、大切にされている実感のない子にも「範囲を広げれば聞いてくれる人が見つかるかもしれない」と思ってほしいからだ。
 授業後のアンケート結果や保健室への相談件数の増加などから、手応えを感じている。東京都教委はこれを手本に、新年度から小中高全校で同様の取り組みを始めることにした。
 「SOSの出し方」は、思春期に限らず、将来においても役に立つ。自殺対策基本法などでも推進がうたわれているが、まだ浸透していない。他の道府県にも授業を広げていきたい。あわせて、相談窓口をネット空間に設け、具体的な支援につなげるなど、若者の生活様式や特性に応じた対策も急がれる。
 もちろん、学校や地域、相談窓口の先に、知識を備え、SOSを受けとめる態勢が用意されていなければならない。
 スクールカウンセラーの充実、若者の居場所づくり……。
 自殺対策にとり組むNPO「OVA(オーヴァ)」の伊藤次郎さんの言葉は示唆に富む。「助けを求めるのは弱い人間のすることだ、という周囲の意識が、相談に向かう足を引っぱっている」
 大人が率先して、弱みも見せあえる寛容な社会を築く。それが何よりの対策だ。

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