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【読売新聞】 認知症受刑者 検査を再犯防止につなげたい

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 高齢受刑者の再犯を防ぐために、出所後を見据えた処遇が必要だ。
 法務省が新年度から、刑務所に新たに入所する60歳以上の受刑者に対して、認知症の検査を義務付ける。主要8か所の刑務所が対象だ。
 近年、受刑者の高齢化が進む。2016年に入所した65歳以上の受刑者は約2500人に上った。高齢者率は12%を超えた。
 高齢受刑者の17%に認知症の傾向が認められる、という調査結果もある。国内全体の高齢者に占める割合よりも、やや高い。
 出所後に、認知症が原因で万引きなどを繰り返す人もいる。
 刑務所では単純作業が多く、軽度の認知症は見過ごされやすいという。認知症と分からなければ、自立困難な人を出所時に福祉や医療につなぐ特別調整制度の対象から除外してしまうことがある。
 この制度を利用して、介護施設や医療機関などに身を寄せた出所者が刑務所に戻る率は、利用しない人に比べて格段に低い。
 再犯を抑止し、治安を守る観点から、入所時の認知症チェックは必要な措置だろう。特別調整制度に基づく支援対象から漏れる認知症受刑者を、可能な限り減らすことが大切である。
 入所時検査で認知症の症状が認められれば、刑務作業を軽減し、認知機能の低下を防ぐ訓練を実施する。症状の進行を抑え、効果的な矯正教育を施す狙いもある。
 これまでは、刑務作業に支障が生じるほどの重症でなければ、受診を勧めず、症状が悪化するケースが少なくなかった。
 受刑者のケアを担う介護スタッフを増員し、刑務官を対象に認知症の理解を深める研修も行うという。受刑者の症状に応じた適切な指導が求められる。
 そもそも、刑務所に入るまでの段階で、認知症だと把握できれば、別の手立ても講じられよう。
 検察庁は、軽微な罪を犯した高齢者らを起訴猶予などで釈放する際に、住居の確保を支援する取り組みを進めている。
 裁判所が、万引きを繰り返す執行猶予中の認知症の被告に対し、施設入所などを理由に再び執行猶予判決を選択する例も見られる。弁護人にも認知症の特徴を理解した上での手助けが欠かせない。
 問題は、受け皿の施設が不足していることだ。法務・検察は、厚生労働省や自治体、福祉施設などとの連携を強化し、協力先を増やすよう努めるべきだ。
 司法全体で、罪を犯す認知症の人への対応を考えたい。

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