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【宮崎日日新聞】 米国の核戦略見直し

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◆冷戦思考への危険な回帰だ◆
 トランプ米政権が中長期的な核戦略指針「核体制の見直し」(NPR)を公表した。米国の安全保障政策のみならず、日本など同盟国の国防政策も左右する重要文書だ。国際的な軍縮・不拡散を主導してきた米国の戦略であるため、核を巡る今後の秩序づくりにも重大な影響を及ぼす。NPRは1990年代以降、歴代政権が発足直後に検討を始め、関係省庁の綿密な議論を経て策定。8年前のオバマ政権は「核なき世界」を明確に志向したのが大きな特徴だった。 小型核で抑止力強化
 日韓の核保有を容認する発言を過去に行い、北朝鮮の対米核武装宣言に「私の核のボタンははるかに大きく強力だ」と反論した大統領下であるため、高い注目が集まった。端的に表現するなら、現代的な核リスクを軽視した、古色蒼然(そうぜん)たる冷戦思考への回帰だ。
 「核なき世界」の目標も事実上放棄している。最大の「標的」は米国との関係が険悪化するロシアだ。「限定的であれ核を先に使えば、予想もできない耐えがたいコストを被ることを覚悟しなくてはならない」と、NPRはロシアを鋭くけん制している。ロシアは近年、一部欧州諸国に核使用を想起させる脅迫的なメッセージを放ち、戦術核の有事使用も辞さない核戦略を採用しているとみられる。
 そんなロシアに対抗し、NPRは広島型原爆の数分の1の爆発力を持つ小型核を新たに開発し、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載する方針を明記した。SLBMに現在搭載中の核弾頭は広島型原爆の最大約30倍の破壊力があり、壮絶な非人道的結末を考えると到底使えない。だから大統領に「より現実的な選択肢」を提示するため小型核を配備し、ロシアへの抑止力を強化するという。 追従姿勢改めるべき
 しかし本当に抑止力は高まるのか。好戦姿勢を示すロシアとはいえ、米国はロシアを圧倒的にしのぐ通常戦力と小型核を保有しており、ロシアは簡単に先制核使用に踏み切れないはずだ。逆に新型核の開発は中国や北朝鮮にも誤ったシグナルを送り、核軍拡競争のジレンマに陥りかねない。米国が「使いやすい核」を持てば、ロシアが核使用に踏み切れないとするのは短絡的で危険な発想だ。
 NPRは他にも懸念すべき点がある。前政権が退役させた海洋核巡航ミサイルの再開発、インフラ攻撃への核報復に象徴される核の役割拡大、包括的核実験禁止条約(CTBT)批准を目指さない方針の表明。より現代的な脅威である核テロを阻止する具体的な処方箋も描かれていない。
 それ以上に驚くのは、欠陥だらけのNPRを安倍政権が「高く評価する」(河野太郎外相)と公言したことだ。核戦力と使用の脅しを最大化すれば抑止力が増強されるという、近視眼的で思慮に欠ける思考がある。被爆国の政府が結果的に核軍拡に加担するのか。追従姿勢を即刻改めるべきだ。

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