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【岩手日報】 「平泉」拡張先送り 揺るがず一丸で登録を

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 世界遺産「平泉の文化遺産」の拡張登録を目指す県と一関、奥州市、平泉町は先週末の会議で、当初予定していた本年度末の文化庁への推薦書素案提出を見送ると決めた。提出時期については、今後あらためて協議する。
 見送りの理由を県は「3市町の意見を聞いて総合的に判断した」とし、「県と関係市町が一丸となって取り組んでいくことが確認できた意義深い会議だった」とした。
 そもそも年度末に推薦書素案を提出していれば、追加登録資産の絞り込みをめぐって、これまで一丸で取り組んできた県と関係市町の間に亀裂が生じかねなかった。
 さらに、一戸町の御所野遺跡を含む「縄文遺跡群」も来年度の国推薦を目指しているだけに、平泉も推薦書素案を提出すれば、同一県の資産が推薦を争うことによる亀裂も懸念された。
 提出見送りは当然の判断。世界遺産の意義に立ち返り、揺るがぬ連携で登録に向けた再出発が求められる。
 本年度は、拡張登録に向けた5カ年の調査研究期間の最終年度。登録を目指す5資産の絞り込み論議が表面化したのは昨夏、拡張登録検討委員と海外専門家の意見交換会(非公開)でのことだった。
 県側が示した4案のうち、中尊寺など登録済み5資産に「政庁の考古学的遺跡」のみを加える拡張案が適切とされた。短期間で価値を証明する可能性の高さを重視したためだが、これでは平泉町の柳之御所遺跡しか入らない。
 仮に柳之御所だけで拡張登録実現となれば、構成資産は平泉町内に限定される。一関と奥州市が、浄土信仰を基調とした村落や、「浄土世界」を支えた産業拠点などの調査研究を進めている中で、資産が除外されては、今後の連携も難しくなっていただろう。
 何のための世界遺産か。人類の宝を将来にわたって継承していくための仕組みだ。県と関係市町一丸の取り組みがその根幹だけに、揺るがしてはならない。
 何のための拡張登録か。単に、登録過程で除外された資産を救うためではない。「浄土世界」にとどまらない平泉の多面的な価値を世界に伝えるためだ。その際、柳之御所が加わるだけで、過不足なく伝えられると言えるか。原点に立ち返った議論が必要だ。
 今後の調査研究の進展次第では、いよいよ5資産全ての価値証明が難しく、絞り込みが必要になるかもしれない。その際も連携が揺るがぬよう、関係市町や地域住民との十分な合意形成が不可欠だ。
 世界遺産の登録審査が厳格化傾向を増す中、平泉の拡張登録の取り組みを全国の関係者が注視している。拙速な先例をつくってはならない。
 

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