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【北海道新聞】 高校指導要領 現場の自主性を第一に

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 文部科学省が、2022年度の新入生から適用する高校学習指導要領の改定案を公表した。
 「主体的・対話的で深い学び」を目指し、全教科で、討論や発表を通じて答えを探究する能動的学習を導入する。
 生徒たちが自ら考える力を養うとの狙いは理解できる。
 ところが、改定案は従来の大綱的性格から変質して、教科ごとの目標や教える内容、「どう教えるか」にまで踏み込んだ。
 これでは、上からの押しつけになりかねない。
 主体的な学習には、創意工夫に富んだ授業を促す必要がある。そのためには学校現場の自主性を尊重するべきだ。
 改定案は、社会の変化や大学入試改革を踏まえ、27科目を新設する大幅な再編となった。複数教科にまたがる科目もある。
 主体的な学びや科目横断的な学習は、従来にないものだ。授業の質を高めることが要求される一方、学習内容は減らない。
 それだけに、授業には困難が伴い、周到な準備が欠かせない。
 国や自治体には、現場の試行錯誤を受け入れ、支える環境整備を求めたい。
 高いコミュニケーション力を求められる英語や、専門教員の少ない地理など、教員の質や量の確保に課題が残る科目もある。
 教員の過重労働解消の取り組みも、緒に就いたばかりだ。
 これらが解決されないまま、見切り発車となれば、新しいカリキュラムも生かされまい。
 改定案が、愛国心の強調や領土教育の重視など、安倍晋三政権の意向を色濃く反映しているのも気がかりだ。
 とりわけ新設の「公共」は、選挙権年齢の18歳以上への引き下げを踏まえ、「国家や社会の形成者」の育成を強く打ち出した。
 日本と世界の近現代史を関連づけて学ぶ「歴史総合」、環境問題など地球規模の課題を扱う「地理総合」とともに必修となった。
 だが、3科目が扱うものは政策や歴史認識など、見方の分かれるものも少なくない。
 とりわけ公共は、道徳教育の中核を担うとの位置づけだ。
 結果的に、政府見解を「正解」として誘導されることもあろう。教科書選定をはじめ、教育への外部の圧力が後を絶たない現状では現場の萎縮を招く恐れもある。
 自主性が損なわれないようにするためにも、現場の裁量とゆとりを確保する必要がある。

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